がん10年生存率58.2%が伝えたかった、たった一つのこと

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乳癌 治験

国立がん研究センターの研究班より、がん患者10年相対生存率の調査結果が公表されました。

調査結果は、臓器部位別、病期別、そして経過年数別と分けて公表されましたが、がん患者全体での10年相対生存率を全面に出した各紙の報道にはあるメッセージ性を感じました。

人類は癌撲滅に向け、また一歩前進した

という。がん患者全体の10年相対生存率は58.2%。言い換えますと、がんの治療を開始してから10年後にがんで死ぬ確率は41.8%。

つまり、がんになっても半数以上の人の命が助かるということを意味します。

これまで、「がん」と診断されることは死の宣告に等しかったでしょう。しかし、今回の調査結果から「がん」は治る病であると国民に周知されました。

ただし、58.2%という数字はあくまでもがん患者全体の10年相対生存率であって、臓器部位別、病期別、経過年数別に分けて数字を見ますと、まったく異なります。

この違いをご理解頂くために、まずは相対生存率の定義についてご紹介します。

相対生存率とは、がんの治療を開始してからX年後、再発・非再発問わずがんによる死を免れた人の割合を意味します。

つまり、期間測定の開始タイミングは治療開始後であって治癒後でないことから、末治癒、再発などにより現在もがんに罹患している患者が含まれます。また、加齢などにがん以外の死因で亡くなったがん患者は除外されています。

以上、相対生存率の定義をご理解頂いたとこで臓器部位、病期、そして経過年数別の相対生存率を見ていきましょう。

臓器部位別相対生存率

まず臓器別の10年相対生存率ですが、臓器部位により生存率の違いが顕著です。

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甲状腺、前立腺、乳、大腸、胃などの臓器部位は明らかにがん全体の生存率58.2%を上回るのに対して、肺、肝、膵などの臓器が明らかに下回ります。

この生存率の違いが何から生じるか?といいますと、治療方法もさることながら、診断方法の確立による差がそのまま生存率の違いに出ているといっても過言ではありません。

前立腺、乳、大腸などのように早期発見可能な臓器は、早期治療介入ができますので自ずと生存率が高まります。

一方、女優川島なお美さんが罹患した胆管がんのような早期発見困難な臓器は、がんを発見した段階で既に手遅れ。治療の施しようがないので、自ずと生存率が下がります。

以上のように、がん全体の生存率は58.2%であるけれど、臓器部位によってこの値はまったく異なるということです。

病期別相対生存率

つぎに病期別の10年相対生存率ですが、臓器と同様に病期によりその生存率の差が顕著です。

病期とは、がんの進行具合を示す指標ですが、ステージⅠからⅣの4段階に分かれ、数字が大きくなるにつれてがんが進行していることを意味します。

例えば、タレント北斗晶さんが罹患した乳がんの病期別生存率は下記の通りとなります。

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ステージⅡからⅢにかけて急激に生存率が下がります。この主な理由は、病期によって手術が可能場合と不可能な場合とがあるからです。

がんを根治する治療方法に放射線療法、薬物療法などさまざまな治療方法があります。

医学の世界は日進月歩で、次々と新しい治療方法が生み出されておりますが、切れるのであれば切るががん治療の鉄則です。もちろん、すべての臓器にあてはまりませんが。

以上のように、乳がんの生存率は80.4%であるけれど、病期によってはこの値とまったく異なるということです。

経過年数別生存率

最後に経過年数別の生存率ですが、これまで5年相対生存率のみでしたが、今回の調査報告で初めて10年相対生存率が公表されました。

この2つの生存率は、比較することでその意味が浮き彫りになります。

その意味とは、がんは臓器別によりその進行スピードが異なるから、がんとの闘病生活が5年を要するものもあれば、10年も要するものもあるということです。

例えば、大腸がんのように5年生存率が72.1%、10年生存率が69.8%のように両群間の生存率に差がほとんどない場合は、5年間で闘病生活に決着がつくことを意味します。

一方、肝臓がんのように5年生存率が32.2%、10年生存率が15.3%のように両群間の生存率に差がある場合は、闘病生活の決着には10年かかるということです。

つまり、5年生存率と10年生存率に差があるかどうかで、生きるか死ぬかを判定する年数が分かるということです。

以上のように、がんが発症した臓器部位によりがんの進行スピードが異なるから、がんによっては5年生存率だけでなく10年生存率も参考にした方がよいということです。

58.2%

がん患者全体の10年相対生存率を見る限り、人類が癌撲滅に向け、また一歩前進したことは揺るぎない事実であり、非常に喜ばしく思います。

しかし、臓器部位別、病期別、そして経過年数別にわけて生存率を見ていくと、人類と癌との闘いはまだまだ決着が着きそうもありません。

安心してください

で話題のお笑い芸人とにかく明るい安村の余命はあと半年になりますが、人類と癌との闘いに決着を着けるため、58.2%という数字を見ただけで

安心しないでください

ね。