長時間労働を否定する3つの科学的根拠

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過労死

Ninja、Sukiyakiと同様に、Karoshiは海外でそのまま通じる日本語です。つまり、過労死という死は英語圏にはない日本独自の死であるということです。

過労死は過労を原因とする死であり、上司をはじめとした周囲の人間から休日、時間外の長時間労働を強いられることで肉体的・精神的に追い込まれることにより発症します。

長時間働くことが死につながるという直接的な因果関係が傍から見えにくいですが、過労による死は殺人といっても過言ではありません。

なぜなら、長時間労働により脳卒中、心筋梗塞、うつ病の発症率が有意に上昇することが科学的根拠を持って証明されているからです。

長時間労働と脳卒中

労働時間が長くなればなるほど脳卒中を発症するリスクが高まることが、一流医学誌Lancetに掲載された医学論文により証明されています。

この研究では脳卒中のリスク因子としての長時間労働の影響を検証することを目的としており、欧州、米国、オーストラリアなど計52万8,908人を対象に実施された前向き試験らの結果を、メタ解析したものです。

標準時間労働を35~40時間/週と定義し、それを超える労働時間を長時間労働と定義した結果、41~48時間/週の労働では脳卒中の発症リスクが10%上昇、49~54時間/週の労働では脳卒中の発症リスクが27%上昇、55時間以上/週の労働では脳卒中の発症リスクが33%上昇することが判っています。1)

長時間労働と心筋梗塞

労働時間が長くなればなるほど急性心筋梗塞を発症するリスクが高まることが、一流医学誌BMJに掲載された医学論文により証明されています。

この研究では急性心筋梗塞のリスク因子としての長時間労働の影響を検証することを目的としており、急性心筋梗塞を発症した40–79歳の日本人とそうでない日本人を対象に実施したコーホート研究です。

標準時間労働を40時間以下/週と定義し、それを超える労働時間を長時間労働と定義した結果、41~60時間/週の労働では急性心筋梗塞の発症リスクが30%上昇、61時間以上/週の労働では急性心筋梗塞の発症リスクが120%上昇することが判っています。2)

長時間労働とうつ病

労働時間が長くなればなるほどうつ病を発症するリスクが高まることが、医学誌PLoSONEに掲載された医学論文により証明されています。

この研究ではうつ病のリスク因子としての長時間労働の影響を検証することを目的としており、うつ病を発症したイギリスの人を1日の労働時間別に比較したコーホート研究です。

標準時間労働を7~8時間/日と定義し、それを超える労働時間を長時間労働と定義した結果、11時間以上/日の労働ではうつ病の発症リスクが29%から152%上昇することが判っています。3)

労働時間は8時間/日、40時間/週まで

以上のように、長時間労働は脳卒中、心筋梗塞など死と直結する病気を発症させるリスク因子です。また、自殺の主要因となるうつ病を発症させます。

ですので、長時間労働を強いる上司らは殺人犯、もしくは科学に対する教養のないサルと言っても過言ではありません。

電通女性新入社員の過労死を機に、長時間労働問題について価値観でなく科学で考える人の数が少しでも増えれば幸いです。

参考文献

1)Long working hours and risk of coronary heart disease and stroke: a systematic review and meta-analysis of published and unpublished data for 603,838 individuals.
Lancet (London, England). 2015 Oct 31;386(10005);1739-46.
2)Overtime work, insufficient sleep, and risk of non-fatal acute myocardial infarction in Japanese men
Occup Environ Med 2002;59:447–451
3)Overtime Work as a Predictor of Major Depressive Episode: A 5-Year Follow-Up of the Whitehall II Study
PLoS ONE 7(1): e30719.